前回の続きです。
現金出納帳の必要性を、3つの視点でお伝えすることにしています。
(1)経営の視点 「マチガイを起こさせないためには、牽制が必要である」
現金商売の代表としては、飲食やサービスなどがあげられます。
一定の規模になると、接客つまり現金の授受は、スタッフに任せる必要がでてきます。
スタッフも、人。残念ながら、ちょっと手癖が悪い方もいます。
毎日のように、売上高と現金残高を記録し、合わない場合はどこで間違ったのか、記録を残すことで
マチガイを起こさせないための牽制にもなるのです。
(2)会計の視点 「1円を合わせられなければ、100万円が合わせられるはずがない」
これは、私がサラリーマン時代に師匠たる上司から言われていたことです。
経理のような、会社全体のお金を帳簿に記録するような仕事をしていると、
ともかく数百万円単位の債権債務を整合させることに目が行き、現金が数円合わないことを軽視しがちです。
しかし手元の現金は、日々、きちんと授受をおこなう限りは間違うわけがありません。
おそらく上司は、そうした日々の取引の大切さを言っていたのだと思います。
日常の記録は、現金・預金から。
そこではじめて、売掛金・棚卸など、さまざまな会計処理を検討することができるのです。
(3)税法の視点 「申告書・決算書の正しさは、みずから立証しなければならない」
決算書・申告書が正しいかどうかは、どうやって裏づけられるのでしょうか。
たとえば売上高。お店の現金売上を少し抜いて、売上を少なく申告し、税金を安くすることを考える人も、中にはいます。
複式簿記の世界でいえば、借方の「現金」と、貸方の「売上高」を、両方ともなかったことにしてしまう方法です。
これを「売上除外」といいますが、もちろん脱税。
オーダー伝票や日報や原価率など、多角的に検証すれば、だいたい税務調査で判明します。
税法の基準に従い正しく申告・納税しているかを立証できるのは、納税者たる会社しかいません。
現金は日々動くものですから、翌日にはもう、ちがう金額の現金しか手元にありません。
だとすれば、申告・納税の正当性を示すには、日々の出納帳が正しく経理され続けていなければなりません。
もちろん、われわれ税理士も、そういった視点で月次監査に取り組んでいます。
逆に現金・預金がただしく記帳されているお客様には、一定の正しさが担保されているわけですから
税理士として建設的で合法的なご提案ができ、ひいてはお客様のためにもなるのです。