法人成りの場合に、個人事業のときの資産を引き継ぐ方法は、
「現物出資」「譲渡」「贈与」「賃貸」という4つの方法がありました。
それぞれの特徴・ちがいをまとめています。
今回は、「贈与」と「貸与」について。
【贈与】
個人事業主と法人は別物、だから、「売る」以外にも「あげる」という方法も考えられます。
これが「贈与」です。
相当の安価で売るのもこれと類似の考え方で、「低廉譲渡」といいます。
メリットは、何と言っても法人側に購入資金が要らないことです。
ただし無償で「もらう」わけですから、収益(受贈益といいます)が発生します。
個人の側も、実は収入(譲渡益)を計算しなければなりません。
この辺りは、少々考え方が難しいところです。
通常、譲渡(売買)した場合では、
棚卸資産の場合は事業所得や雑所得、事業用資産は譲渡所得の対象になります。
時価100円のものを100円で法人に売ると、もちろん収入は100円です。
ところが贈与・低廉譲渡の場合でも、その時価に相当する金額で譲渡があったものとみなされます。
時価100円のものを無償(タダ)や低廉(たとえば10円)であげると、
100円で譲渡したものと引き直すわけですから、贈与は慎重に考えなければいけません。
【賃貸】
第4の選択肢です。出資する、売る、あげる、のいずれでもなく、
所有権をそのままにして法人に「貸す」という方法です。
在庫を貸すということはあり得ませんので、
個人名義の店舗を法人に貸すといったように、不動産などが対象として考えられます。
メリットは、法人側に資金が必要ないこと、不動産の名義変更(所有権の移転)を伴わないことです。
また、継続的に法人から家賃収入を得ることができます。
逆にいえば、不動産所得としての確定申告がずっと続くことになります。
現実的には、どれがいい、ということではなく、4つの方法のベストミックスで考えますので、
法人成りの検討をはじめる段階で、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。